FX取引を行う中で、期待していたレートと異なる価格での決済が発生することがあります。 事実、利益が出るはずだと思っていた取引が、結果として損失となってしまったという経験を持つ人も少なくありません。 この現象は、FX取引の中で「スリッページ」として知られています。 スリッページはFXの取引で生じる損失に繋がる要因となるため、軽視してはいけません。 実際に、この問題を正しく理解し、適切に対応することが求められます。 本篇では、FXでのスリッページが何であるのか、そしてそのスリッページをどのようにして回避すれば良いのかについて説明します。
そもそもスリッページとは?
さて、スリッページの概念について詳しく見てみましょう。 まず、スリッページとは具体的に何を指すのでしょうか? スリッページとは、取引を行う際に注文した価格と実際に取引が成立した価格に差異が生じる現象のことを指す言葉です。 この現象は「約定のズレ」や「ずれる」という言葉でも説明されることがあります。 FX取引は、各FX業者を通じて実行されますが、このプロセスにはいくつかの手順が存在します。 具体的には、
①トレーダーが注文を出す
↓
②その注文に基づき、FX業者がインターバンク市場に注文を行う
↓
③その取引が成立する
という流れとなります。 この一連の流れの中で、時間のズレが発生することがあります。 また、相場が非常に活動的な場面では、スリッページが起きやすくなるのです。 多くのトレーダーが参加することで相場が活発化し、それに伴い、注文の処理が遅くなることがあるのです。 スリッページの影響は両刃の剣で、予期せぬ利益を生むこともあれば、突如として損失を生むリスクもあります。 そのため、この現象をできる限り避けるべきです。 特に、短期の取引を多く行うトレーダーにとって、スリッページの影響は無視できません。 日々の取引の回数が多いトレーダーや、スキャルピングやデイトレードのような短期取引の戦略を採用するトレーダーは、スリッページに特に警戒しなければなりません。 なぜなら、これらの取引手法は少額の利益を継続的に得ることを目指すため、小さな損失が重なれば、最終的に大きな損失となるリスクがあるからです。
スリッページを防ぐためには?
先でも触れましたが、リスクがある以上はスリッページを回避していかなければいけません。
では、どのようにスリッページを回避していけばいいのでしょうか?
スリッページを防ぐ方法は大きくわけて2つあるのですが、具体的にその方法について具体的にお話していきたいと思います。
最初から約定力の高いFX業者を選んでおく
スリッページの背後にはさまざまな要因がありますが、FX業者の約定能力はその主要な要因の一つです。 FX業者の約定能力が高い場合、注文を行ったときから約定するまでの時間が短縮されるため、スリッページのリスクや約定が拒否されるケースが減少します。 一方で、約定能力が低いFX業者では、注文から約定までの間隔が長くなる可能性があり、スリッページや約定拒否のリスクが増えます。 約定能力が高い業者を利用すれば、トレーダーは望む価格とタイミングでの取引が容易になります。そのため、約定能力が高いFX業者を選ぶことで、取引をより安心感を持って行うことができます。 しかしながら、スリッページの頻度やタイミングは業者によって異なるため、スリッページリスクを最小限にするには、複数の業者を利用し、その特性を比較・分析するのが賢明です。 その上で、それぞれの業者の特長を生かしつつ、適切に業者を選ぶことが効果的と言えるでしょう。
許容スリッページを設定しておく
FX業者の特性はそれぞれ異なるでしょうが、許容スリッページの設定が可能な業者が多いと考えられます。 設定の範囲は、投入資金、レバレッジの大きさ、投資アプローチや市場の状態に応じて変わることがあります。 以下は、参考として一つの例を示すものとして捉えてください。
スキャルピング | 0.3pipsから0.5pips |
スイングトレードや今の取引を必ず約定させたい場合 | 5pips |
値動きの激しい相場で取引する場合 | 5pipsから10pips |
その他 | 0pipsに近い小さな数値 |
確かに、スリッページをゼロにする選択肢もあります。 だけど、これを選ぶと指定した価格以外での取引が成立しなくなります。 急な価格変動がある際、全く取引ができなくなることも考えられるので、適切に設定を見直すことが大切です。 特に、市場の価格が大きく動く状況で、迅速に取引を完了しないと損失が拡大する場合、スリッページをゼロにしていると取引が遅れるリスクが高まります。 活発な市場では、許容スリッページを5pipsから10pips程度に設定すると良いかもしれません。 スリッページの設定は一度きりのものではなく、トレーディングのスタイルや市場環境に合わせて調整することが重要です。
スリッページにおける注意点
スリッページに関してはいくつかの注意点もあります。
これらの注意点もしっかりと頭に入れておきましょう。
逆指値注文ではスリッページが効かない可能性がある
逆指値注文は、設定した価格を上回った際に購入し、設定価格を下回った際に売却するような注文を示します。 この注文が条件に合致すると、その時点の市場価格で取引が行われるため、スリッページが生じる可能性があります。 「逆指値がスライドする」とも言います。 この逆指値注文は「ストップロス注文」としても知られており、主に損失の制御を目的として設定されます。 このため、注文が成立すること自体が重要となり、指定の条件をクリアすれば自動的に取引されるため、許容スリッページの設定は必ずしも意味があるわけではありません。
スリッページに振り回されないようにする
スリッページにより損を被る可能性を考えると、自然とその問題に気を取られることがあるでしょう。しかし、そのことによってトレードのタイミングや利益を追求する機会を逃してしまうのは望ましくありません。 実際、スリッページの影響は投資のスタイルや戦略によって異なります。例えば、スキャルピングやデイトレードのように頻繁に取引を行うスタイルの場合、スリッページの影響は大きくなりますが、スイングトレードや長期間の取引を行う場合、その影響は限定的です。 ですので、スリッページに関する「一つの答え」を追求するのではなく、各自の投資スタイルや戦略に合わせて、適切な対策を施していくことが大切です。